生成AIを業務で使い始めると、必ずぶつかる壁があります。「うちの社内規定のことは答えられない」「自社商品の仕様を聞くと、もっともらしい嘘をつく」。この壁を越える仕組みがRAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)です。この記事では、エンジニアでない方に向けて、仕組みと使いどころを実務目線で整理します。
生成AIが「知らない」問題
ChatGPTのような生成AIは、学習した範囲の知識しか持っていません。だから次の3つが苦手です。
- 社内の情報 — 就業規則、業務マニュアル、過去の提案書。学習データに存在しない
- 最新の情報 — 学習時点より後の出来事や、更新された規定
- 正直に「知らない」と言うこと — 知らない質問にも、もっともらしい回答を生成してしまう(ハルシネーション)
RAGの仕組みは「調べてから答える」
RAGを一言で説明すると、「AIに暗記させるのではなく、答える前に資料を調べさせる」仕組みです。動きは3ステップです。
- ① 資料を登録する — 社内規定やマニュアルを、AIが検索できる形(ベクトルデータベース)に変換して保管する
- ② 質問が来たら、まず検索 — 「経費精算の締め日は?」と聞かれたら、関連する規定の該当箇所を資料から探し出す
- ③ 見つけた資料を根拠に回答 — AIは検索結果を読んだうえで答えるため、根拠のある回答になり、出典も示せる
「オープンブック試験を受けるAI」と考えるとわかりやすいでしょう。暗記に頼らず、手元の資料を見ながら答える — だから社内の情報にも、更新された情報にも対応できます。
- RAG=「暗記させる」のではなく「調べてから答えさせる」仕組み
- 社内規定Q&A・表現チェック・ナレッジ検索など、答えの根拠が必要な業務に効く
- 成否の9割は資料の整備。AIより先にドキュメントを揃える
何に使えるか — 実務のユースケース
- 社内規定・マニュアルのQ&A — 総務・情シスへの「これどこに書いてありますか」問い合わせを削減
- 表現・文書のチェック — 業法や社内ガイドラインをRAGに持たせ、広告文や資料のNG表現を根拠つきで自動検出。当社代表が事業会社で開発・運用してきた領域です
- 過去ナレッジの検索 — 過去の提案書・議事録・対応履歴から「似た事例」を引き出す
共通点は、「答えに根拠が必要な業務」であること。自由な発想が欲しいブレストにはRAGは不要で、正確さが求められる参照業務にこそ効きます。
導入前に知っておくこと
- 成否の9割は資料の整備 — 古い規定が混ざったまま登録すれば、AIは古い規定を根拠に答えます。「どの資料を正とするか」の整理が先
- 精度は測ってから広げる — 想定質問リストを作り、正答率を確認してから公開範囲を広げる
- 小さく始められる — いまはノーコードに近いサービスも増え、まず1つの規定・1つの部署から試すことが可能です
まとめ
RAGは「調べてから答えるAI」。社内の知識に、根拠つきで答えられるようになる仕組みです。鍵は技術よりも資料の整備 — つまり、AI導入というよりナレッジ整理のプロジェクトとして捉えるのが成功の近道です。
MARCREVIXでは、ユースケース選定から資料整備・RAG構築までをご支援しています。業務に定着するAI導入の設計図もあわせてどうぞ。
